気候変動に対する取組み
気候変動に関する認識と方向性
星野リゾート・リート投資法人(以下、「本投資法人」)及びその資産運用会社である株式会社星野リゾート・アセットマネジメント(以下、「本資産運用会社」)は、気候変動の進行が、地球上の自然環境や世界の社会構造、そして人類をはじめとする生物の営みに劇的な変化をもたらし、かつ本投資法人及び資産運用会社のビジネス全体に重大な影響を与える重要課題であると認識しています。したがって、本投資法人が長期的に持続可能な企業活動を行うためには、気候変動がもたらす企業活動への影響を低減することが必要不可欠であると考えています。このような認識のもと、2050年のネットゼロへ向けた以下のロードマップを作成し、2030年を目途に40%以上(2020年比)のGHG排出量削減を計画しています。
18世紀後半の産業革命以降、人類が石炭や石油等の化石燃料の大量消費や人工肥料の開発等を行ったことによって、宇宙への熱放出を妨げる効果を持つ二酸化炭素(CO2)等の温室効果ガスが大気中に大幅に増加したため、気温の上昇のみならず、地球の気候に様々な影響が生じ始めています。この壮大な地球環境の変化への対策には、ゲームチェンジャーとなる偉大なテクノロジーの発明や進化の時期を迎えるまで時間がかかるといわれています。
そうしたテクノロジーが開発されるまでの間、科学的にかつ効率よくGHG排出量の削減を目指すのみならず、食品ロスの低減や地域規模での経済活性化、生態系の維持等に取組み、地球上の炭素循環全体を適切な状態にリカバーすることで社会に貢献していくことが、本資産運用会社の気候変動に関する方向性です。
ネットゼロへ向けたロードマップ

TCFD提言への賛同表明
本資産運用会社は、気候関連の情報開示を企業・金融機関がどのように行うかを検討する目的で金融安定理事会(FSB)により設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」による提言(TCFD提言)に対し、2021年11月に賛同を表明するとともに、国内の賛同企業等が参加する「TCFDコンソーシアム」に加入しました。


気候変動対応に関するガバナンス体制
本資産運用会社は「ESG委員会」(以下、「本委員会」)を設置しています。特に、気候関連課題への対応については「気候変動・レジリエンスポリシー」を策定のうえ、気候関連課題に係る最高責任者を代表取締役社長、執行責任者をチーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)として、取組みを進めています。
ESG基本方針(ポリシーとマネジメント体制、環境経営)
ガバナンスの取組み(リスク管理)
シナリオ分析の実施
本資産運用会社は、気候変動が本投資法人に与えるリスクと機会を把握し、それが事業に与える影響を検討するために、以下の2つの世界観に関するシナリオ分析を実施しました。


シナリオ分析に基づく財務的影響の検証
さらに、本資産運用会社は、シナリオ分析に基づき、本投資法人の事業に影響を与え得るリスクと機会を特定し、その発生可能性や財務的影響、そして特定された事象に対する対応策を以下の通り分析・評価しました。また、上記の4℃、1.5℃のシナリオごとに、リスクと機会の財務的影響の大きさをそれぞれ検証しました。各シナリオについて、中期(2030年)と長期(2050年)の見通しを設定しています。概要は下表のとおりです。
財務的影響(中・大)の考え方:定性的に分析し、相対的な影響度を評価しています。
シナリオ分析表
この表は左右にスクロールできます。
財務的な影響 | |||||||||
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4℃ シナリオ |
1.5℃ シナリオ |
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リスクおよび機会 | 財務的な影響 | リスク管理、対応策、取組み | 中期 | 長期 | 中期 | 長期 | |||
移行リスクと機会 | 政策と法 | 炭素税の導入によるGHG排出に対する課税の強化 | リスク | 物件のGHG排出量に対する税負担が増加して収益が悪化する | 関連金融機関からの意見聴取、より高効率な省エネ設備の導入や切り替え | 小 | 小 | 中 | 中 |
省エネ法の排出量報告義務が厳格化 | リスク | 報告に対応するための外部業者への支払など事業経費が増加する | 省エネ性能の高い設備への改修の実施 | 小 | 小 | 中 | 中 | ||
海外(特にヨーロッパ)の法規制への対応 | リスク | 対応が遅れることにより、海外機関投資家の投資判断に影響を及ぼし、投資対象から除外される可能性が高まる | 海外の弁護士や投資家等への必要事項インタビュー等を実施 | 中 | 中 | 中 | 中 | ||
テクノロジー | 再エネ・省エネ技術の進化・普及 | リスク | 保有物件の設備が技術的に時代遅れになるのを防ぐために新技術導入の費用が増加する。さらに選択するテクノロジーによっては革新的な技術の進化によりさらに時代遅れになり、費用が無駄になり設備投資コストの更なる上昇が予想される | 高効率技術や設備を開発・提供する事業者との協業 | 小 | 小 | 中 | 中 | |
クリーンエネルギーや最新の高効率設備への改修に対応した新築物件取得を推進 | 機会 | 物件の環境性能の向上、エネルギーの効率向上による費用削減 | 中 | 中 | 中 | 中 | |||
市場と評判 | 不動産鑑定への環境パフォーマンス等の基準の導入 | リスク | ファンドのNAV(Net Asset Value) の低下 | 省エネ性能の向上、売却の検討、グリーンピルディング認証取得比率の向上、現状の見える化など準備 | 小 | 小 | 中 | 中 | |
水光熱費(含む外部調達の再エネ) の上昇 | リスク | 事業経費の増加 | 水:上水、中水、下水の利用状況把握。 エネルギー:修繕等ではエネルギー効率のよいものを選択、運営手法の変更(マイクログリッドなどの検討) |
中 | 中 | 小 | 小 | ||
テナントや宿泊客の需要変化(より気候変動への対応が進んだ物件を選択する、または対応していない物件を避ける) | リスク | 宿泊客の減少の可能性が高まり収益が減少する可能性がある。新規物件購入の際環境建築を条件にするとマーケットが狭まり、物件取得にかかるキャッシュアウトの増加ならびに借入の増加可能性がある | 現時点での実態調査と今後の予測および精査。気候変動対策の可能性が高い物件の取得検討。新規取得物件時に座礁資産チェックリスト等回避の基準を設定 | 小 | 小 | 中 | 中 | ||
環境性能の高い建築を選好する傾向が高まり資材や人材の調達環境が変化 | リスク | 環境性能の高い資材不足、工事の集中による人件費の高騰 | 中長期のプランニングとステークホルダーとの事前契約 | 小 | 小 | 中 | 中 | ||
投資家からのプランド価値の低下 | リスク | 事業環境の悪化により資金調達が困難になる | 認証制度、ESG対応、現状分析による中長期の環境対応の計画開示 投資家の分散(拡大) |
小 | 小 | 中 | 中 | ||
テナント、宿泊客からの信頼の低下 | リスク | 宿泊者から選択されず運営収益が悪化する | テナントとオーナーの研修や議論を経て方向性の合意をとったうえでの環境運営の実施計画 テナントとのパートナーシップの強化 |
小 | 小 | 中 | 中 | ||
テナントの嗜好の変化に合わせた賃貸物件を継続的に提供(賃料連動する物件) 新規顧客層の開拓 |
機会 | 賃料引き上げ、宿泊客穫得・確保改善により収入増加 | ポートフォリオの環境性能をタイムリーに行い物件を高性能化 | 小 | 中 | 小 | 中 | ||
新規投資家層の開拓 | 機会 | グリーンボンドやサステナビリティファイナンスの活用 環境間題を重視する投資家への対応・訴求による資金調達量の増加、調達コストの低下 |
各種フレームワークの調査 | 小 | 中 | 小 | 中 | ||
CSVの推進 | 機会 | 保有物件の環境性能の向上 CSVにつながるユニークなアプローチを見出す 物件の竸争力の向上 投資家の増加、エリアの拡大 |
グリーンビルディング認証などは中長期的に対応しつつも独自の環境性能研究を行いオペレーターとともに検討 | 中 | 中 | 中 | 中 | ||
物理的リスクと機会 | 急性 | 台風やゲリラ豪雨などによる風害や浸水で物件が被害を被る(含む) | リスク | 修繕費・保険料の増加、休館による稼働率の低下、交通機関のマヒによる顧客の減少 | ポートフォリオの分散 | 大 | 大 | 中 | 中 |
大規模地震(首都圏直下型、南海トラフ)や火山噴火(富士山、浅間山)の発生 | リスク | 修繕費・保険料の増加、休館による稼働率の低下、交通機関のマヒによる顧客の減少 建物の減失 |
ポートフォリオの分散、被害を事前に食い止める必要なデータ収集後、レジリエンシー対応を計画 | 大 | 大 | 大 | 大 | ||
慢性 | 海面上昇により海抜の低い物件などが浸水する | リスク | 大規模改修(嵩上げ)費用の発生や集客減 | リスクアセスメントの実施 | 中 | 中 | 中 | 中 | |
災害(水害、地震等)の頻度が増加傾向、台風の激甚化 | リスク | 修繕費、保険料など維持費の増大、および保有物件の上地の価格の下落 | 災害に対応できる設備導入や避難設備やルートの強化 | 中 | 中 | 中 | 中 | ||
環境建築の高性能により宿泊客からの評価、稼働率向上 | 機会 | 収益向上による賃料の増加 | 高性能な環境建築への計画立案 | 中 | 中 | 中 | 中 | ||
物件のあるリゾートや地域の自然 (森林、海、川)の保全と共存による二酸化炭素削減と景観の維持へつなげる | 機会 | 地域や自然の活性化により地域経済の活性化をはかる 企業イメージの向上 宿泊者から選ばれるホテル収益にプラス J-クレジットなどの採用 |
オペレーターとの協議開始 | 中 | 中 | 中 | 中 | ||
ユニークな環境建築やリゾートへの転換 | 機会 | 物件の競争力向上、不動産価値の向上、不動産取得環境において優位性を保つことによる収益の維持・向上 | 物件にかかわる技術的およびデザイン的な専門家チームとの協業により、宿泊施設およびその地域の未来を創造。同時に生態系から炭素循環を配慮し施設の持続可能性を検討する | 中 | 中 | 中 | 中 |
1.5℃シナリオ | (移行リスク)IEA NZE2050シナリオ | (物理的リスク)IPCC RCP2.6シナリオ |
4℃シナリオ | (移行リスク)IEA SPSシナリオ | (物理的リスク)IPCC RCP8.5シナリオ |
- IEA:国際エネルギー機関
- IPCC: 気候変動に関する政府間パネル
ホテル市場・不動産業界におけるリスクとその対応と管理
1. 移行リスク
気候変動対策としての政策や法規制の強化は、2050年ネットゼロ達成に向けて、GHG排出規制、建物の省エネ性能規制、炭素税導入等の様々な形で不動産ビジネスに影響が生じることが危惧されます。さらに、ヨーロッパ諸国をはじめとする環境先進国における機関投資家からの要請や投資判断に関して迅速な対応を求められる可能性もあります。
観光事業、宿泊事業においては、環境に対するゲストの意識の高まりによって、中長期的に選ばれるホテルとなるべく地域環境や経済循環のため一層の努力をすることが必要とされており、観光市場は大きな転換期を迎えています。
本資産運用会社は、この気候変動の「移行リスク」に対して、GHG排出削減やエネルギー効率改善のための建築物の省エネ化をベースとし、建て替えではなく耐震等の条件をクリアした上でリファイニングする等、様々な方策を取りGHG排出を抑えると同時に、地域文化を担う第1次産業や自然環境保全を通して炭素循環を最適化し、様々な方向からのGHGの排出削減へのアプローチを考えていきます。
具体的な取組みは以下の通りです。
観光業としてのGHG削減への取組み
建築物の修繕等では、上記のとおり常にGHG削減の方法を検討していくことに加え、ホテル・旅館の運営シーンにおいても「3R(リユース、リデュース、リサイクル)」やアメニティのポンプボトル化、客室のミネラルウォーター等ペットボトル設置廃止等を推進し、滞在の快適さを失わない方法でオペレーターと協力していきます。また、宿泊施設の環境に合わせた地域保全を行っていくために、食材の地産地消や海、川、森等の炭素循環に配慮した環境保全活動ができる体制を整えた上で、サプライチェーン排出量(注)の削減も視野に入れていきたいと考えています。
- 事業者自らの排出だけでなく、事業活動に関係するあらゆる排出を合計した排出量を指します。つまり、原材料調達・製造・物流・販売・廃棄など、一連の流れ全体から発生する温室効果ガス排出量のことです。
サプライチェーン排出量=Scope1排出量+Scope2排出量+Scope3排出量
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/supply_chain.html
2. 物理リスク
元来、地理的に夏から秋にかけては台風や大雨、冬には積雪がある四季の風情は、観光産業にとって食や行事を培ってきた日本文化の源泉になっています。しかしながら、そうした四季の風情は気候変動によって災害のレベルに引き上がりつつあり、また、南海トラフ地震等の大地震がそう遠くない将来に発生することも予想されている現在においては、レジリエンス体制が、事業継続と人命救助という観点でまさに重要になってきています。特に自然災害が頻発化・激甚化していくに際し、修繕費増大や保険料高騰等の財務的影響は「物理リスク」として課題となり得ます。本資産運用会社は、災害による保有物件への被害を最小限にしポートフォリオの収益性が毀損するリスクを低減するべく、強靭性を高めるための対策を準備中です。具体的には、各保有物件が持つリスクの現状を認識したうえで、レジリエンス機能と回復力を検討し、本投資法人の財務に対する影響度やポートフォリオにおける重要性等を加味した上で、シナリオ分析に沿って優先順位を決定し、規律ある計画を実行していく予定です。